令和6年6月定例会 一般質問全文

目次

1 訪問介護について

(1) 重要性[ 知事]

高齢者が自宅で暮らしていくために、訪問介護は欠かせないサービスの一つで、ホームヘルパーが身体介護や食事作りなどの生活援助を担ってくれているお陰で、安心を実感している人は岡山県内でも多いのでないでしょうか。

いまその訪問介護事業が苦境に陥っています。元々、賃金水準が低く、人手不足は深刻で、有効求人倍率は15倍を超えます。特に小規模事業所で廃止や休止が相次いでいます。

さらにこの4月の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。

国の介護政策は「施設から在宅へ」の方針に沿って、住み慣れた場所で、その人らしく暮らせるよう、医療や介護が連携する、地域包括ケアを進めてきたはずなのに、です。
在宅介護の柱である、訪問介護は強化すべきなのに、報酬を引き下げたことは、理解し難く、基本方針に逆行すると考えられます。訪問介護が利用できなくなれば、家族が介護のために離職を余儀なくしたり、高齢者が施設に入らざるを得なくなります。しかし、施設も定員オーバーで、順番待ちが続いているのが現状です。

岡山県内での、訪問介護の重要性について、どのようにお考えですか。知事にお伺いします。(1)

(2) 現状把握等[ 子ども・福祉部長]

訪問介護の基本報酬を引き下げたのは、厚生労働省が23年度の経営実態調査を基に、訪問介護事業所の平均利益率7・8%が高いと判断したからと言われています。この数字は介護サービス全体の2・4%を大きく上回ります。

しかし、この数字だけで介護事業所の経営実態は把握できません。サービス付き高齢者向け住宅に併設し、入居者を訪問する事業所は効率が良いですが、対照的に、一軒一軒離れた個人宅を回る事業所は、経営が厳しく、その要因は移動に時間や経費がかかる為、効率が悪いと言えます。この分析方法は見直すべきです。

次回の介護報酬改定で、報酬の上がる見込みも不透明な中、多くの訪問介護事業所が今後もサービスを提供し続けられるかは疑問です。多くの事業所が撤退をしてからでは、サービスを必要としている方が利用できなくなる恐れがあります。

本県の訪問介護事業所の現状を速やかに把握し、介護報酬の見直しを国へ働きかけていただけないでしょうか。
また、県からも、例えば移動の距離に応じて、ガソリン代の補助金を出すなど、何か支援出来る事は本当にないでしょうか。併せて子ども・福祉部長にお伺いします。(2)

(3) 補助制度の導入等[ 子ども・福祉部長]

いま東京などの都市部では20代~30代のヘルパーしか雇わない訪問介護事業所もあるようです。
これらの事業所は土日祝休み、日勤のみ、残業なし、ペーパーレス化(ICT化)などの条件を提示しているそうです。デジタルネイティブと言われる世代は紙に書くことを嫌う方も多いようです。

人材確保のため、利用者のニーズよりも、職員のニーズにサービスを合わせる時代になってきているのだと考えさせられます。

ヘルパーの平均年齢が高く、大量退職の懸念がある中、従来のやり方ではなかなか人が集まらないのであれば、思い切って若い方を中心に事業所を運営するのも、それはそれで新たな形態だと感じています。

しかし、小さな事業所だと、使える予算も少ない事も有り、ICT化のシステムや機器を導入する事が出来ないのが実情です。

若者が介護業界に入りやすくするためにも、訪問介護事業所のICT化を進めるための補助制度を導入してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。

また、訪問介護は利用者宅へ訪問する為、利用者と2人きりになる事も多く、セクハラやカスハラ等の被害をよく耳にします。また逆に介護者から利用者への虐待が行われることも考えられます。

訪問介護員や利用者を守るためにも、作業の状況などを録画できる見守りカメラの購入などの補助が出せないのでしょうか。併せて子ども・福祉部長にお伺いします。(3)

2 防災対策について

(1) 能登半島地震の教訓[ 危機管理監]

4月に石川県の能登町、珠洲市、輪島市、内灘町へ、被災後の現状を確認しに行ってまいりました。(資料1)
石川県庁から珠洲市の震源地まで直線で約120kmあります。岡山県庁から見ると神戸、松江・鳥取、ぎりぎり広島市、高知市へ入るぐらいの距離です。

現地の状況は発生からすでに3か月以上経っていましたので、復興に向けて準備をしている地域もあれば、いまだに被災した状況のままで、手つかずになっている地域など、同じ災害ですが地域によって様々でした。
お伺いした先々で、現地の方やボランティア団体の方などからお話を伺いしましたので、岡山県では今後どのような対応をしていくのかと、疑問に思った点などを中心に質問をいたします。

令和6年能登半島地震の教訓から岡山県は何を学び、どのような対策をするのでしょうか。現在の状況を含めて、危機管理監にお伺いします。(1)

(2) 災害時協力協定[ 危機管理監]

今回、災害被災地で人道支援を中心に活動している団体の方からお話を伺いました。この方々や団体は平成30年の西日本豪雨災害の際にも倉敷で活動をしていただいていたそうです。

この度の地震で1つの団体に被災した複数の自治体から次々に支援の依頼が来たそうです。また、ある団体から自治体へ支援の申し出をしたが、その時は断られたそうです。その後、その自治体から改めて支援の要請が来た際には、人員の関係で現地へ入ることが遅れたそうです。

被災直後の混乱の中で、自治体が迅速に判断を下すというのは本当に難しいと感じました。

県では「岡山県における災害時協力協定」で様々な目的別や協力内容の災害時協力協定の締結をしています。

しかし、この協定の中に避難所運営や環境整備を支援する活動の項目や、西日本豪雨災害時にそのような活動を行った団体はありませんでした。

日本の避難所は他国に比べて遅れていると言われますが、今回、避難所を数か所、拝見したところ、どの避難所も(資料2-1)を見ていただきたいのですが、テントの様な物で仕切られて一定のプライバシーが確保されていて、家族単位や男女を部屋で分け、段ボールベッドが完備され、清潔に保たれていました。

また、被災地ではDMATやDWATといった団体との連携も重要です。特に一定の期間を過ぎるとDMAT等の担当者は被災地からご自身の通常業務へ戻ってしまう為、新たな方が現地へ入ってきた際には、情報を共有するような役目も果たしていると仰っていました。

大規模災害が発生した場合、被災者の数が多く、また、自治体職員は各種対応に多忙を極めることになります。自治体職員も被災者の一人です。
避難所の運営は、市町村が主体的に運営するものであることは承知していますが、こうした避難所の運営等に、知見のある団体と県が災害時協力協定を締結することで、災害時にスムーズな支援を受けられるものと考えますが、危機管理監のご所見をお伺いします。(2)

(3) 被災住宅への支援[ 土木部長]

被災後の生活で何が一番キツイかといったら、断水でトイレが流せない・できないことだそうです。非常用簡易トイレキットがありますが、震災直後は備品が潤沢になかった為、1家族で1つのキットを1日使うなんて事もあったそうです。トイレをしたくないから、食べない・飲まないといった方もいたそうです。

4月に視察へ行った当時、特に被害が甚大であった珠洲市では、まだほとんどの家庭で断水していて、水が出るところは体感ですが10%前後と言われていました。
断水していてトイレが流せない為、(資料2-2)市役所や避難所等の人が集まる場所に全国の自治体の仮設トイレが設置されていました。小学校の避難所へ倉敷市の仮設トイレが設置されていました。ちょうど伺った当日にも、他の所で仮設トイレが届き、設置が行われていました。近くで活動している方は、大変喜ばれていました。

その後、6月14日にようやく、断水が解消し、復旧したといった報道がありました。

しかし、これは本管の復旧で、実際に水が出るのは、本管から各家庭へ伸びている給水管が断裂しているかどうかにより、断裂している場合は、各自で宅内配管の工事の手配が必要になります。

その為、工事業者に依頼が殺到して順番待ちが続いており、視察の際、地元の方にお聞きしたところ、「以前は2ヶ月待ちだったが、いまは業者から「いつできるか分からない」と言われている」とのことでした。
本管が復旧しても、直ちに各家庭で水が使えるわけではありません。

上下水道が引き込めない為、その地域での暮らしを諦めて、引っ越す方もいたそうです。

断水で困っている被災地の住民に対して、少しでも早く、復旧することが望まれます。

(資料2-3)この写真の建物は倒壊していますが、写真右のような倒壊していないお宅でも断水している所が多かったと聞いています。

5月にようやく石川県が「地元市町以外の事業者が行う宅内配管修繕の掛かり増し経費に対する県補助制度」の創設をしたと報道がありました。

掛かり増し経費は、県内の遠方の工事業者に依頼した際の、移動に要する燃料代や宿泊代等の経費の事で、
この補助制度は、県が工事業者に掛かり増し経費を直接補助するもので、建物の所有者のご負担はないというものです。

岡山県も南海トラフ地震などが起こった非常時の際に、石川県の様な、災害により被災した住宅を支援する制度を、宅内配管が断裂した場合に限らず、様々な設備に対して、早い段階で創設できるよう検討しておいてはいかがかと思いますが、土木部長のご所見をお伺いします。(3)

(4) 液状化対策[ 危機管理監]

内灘町は、能登半島地震の際の震度は5弱から5強であり、他の地域と比べて建物の倒壊などは少なかったそうですが、町内の各地で液状化が起きていました。

地震で砂が噴き出して家屋が傾き、道路が波打ち、家が沈み込んだり、大きく隆起してしまった場所もありました。

(資料2-4)右に男性が立っていますが、この前にあるのは奥にあるお宅の車庫です。左の建物の1階のひさし以上の高さがあった車庫の屋上が、人間の身長よりも低いところまで沈んでいます。

ずっと復旧には手付かずの状態でしたが、先月ようやく被災した住宅の公費解体が始まりました。しかし、一部地域は下水道の復旧の目途も立たっていないといった報道もあります。

他の地域に比べて、復旧が遅れているのは、液状化は、その後の対応が難しいためであると思われます。

県は平成25年に南海トラフ巨大地震による液状化危険度分布図を作成しています。10年以上経過していますが、県内での液状化対策の現状について、どう捉えておられますか。
また、今回の能登半島地震における状況を踏まえて、何か対策は考えておられるのか、危機管理監にお伺いします。(4)

3 情報セキュリティについて

(1) 岡山県精神科医療センター[ 保健医療部長]

ア侵入経路等

先月、岡山県精神科医療センターはランサムウェア攻撃により電子カルテシステムが停止しました。
攻撃者はVPN機器の脆弱性を突き、データを暗号化し、脅迫メッセージを残しました。

今月に入り、患者情報などの流出が確認され、最大4万人分が影響を受ける可能性があると発表しました。

センターは情報が流出した可能性がある方には、個別説明、又は、文書送付等を順次行っており、相談窓口も設置したと伺っています。
ウイルスに感染した原因は公表されていませんが、VPN機器の更新が遅れたことが被害の一因とされ、原因究明後、VPNを含めシステムを更新する方針、といった報道がありました。

侵入経路や流出した情報について、わかっている範囲でお答えください。

加えて、VPN機器の脆弱性について、自治体病院の全国組織より2023年6月に連絡を受けたにも関わらず、対応が遅れた理由を教えてください。

そして、情報が流出した可能性がある方には、どのような影響があると考えられるのでしょうか。併せて保健医療部長にお伺いします。(1)ア

イ受止め等

また、今回の事案について、県はどう受け止めているのか。そして、こうした事態を県内の病院で再び起こさせないため、他の病院へどう対応しようとされているのか、併せて保健医療部長にお伺いします。(1)イ

(2) 庁内の対応等[ 総務部長]

一方、県庁内のセキュリティ対策について、今回の事態を踏まえて県としてはどのような対応を検討しているのでしょうか。

庁内における対策の強化だけでなく、ウイルスに感染した際の影響力から、外郭団体や県が設立した地方独立行政法人についても、情報セキュリティの水準を向上させるための指針のようなものを作成し、示すべきと考えますが、いかがでしょうか。併せて総務部長にお伺いします。(2)

4 金融リテラシーの向上について

(1) 取組の重要性教育協力[ 知事]

今年から新しいNISA制度が始まり、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新し、3月には史上初の4万円を超えました。

このため、投資や資産運用への関心が高まっていますが、その恩恵を享受しているのは一部の人だけと感じている県民も多いでしょう。

1990年代初頭のバブル経済崩壊以降、日本は長期的な景気低迷が続いている状態でした。しかし、近年は国際情勢や円安の影響で、日本国内の物価が上がり、お金の価値について改めて考える機会が増えたと感じます。このような状況下で、多くの人々が漠然とした将来へのお金の不安を抱いています。

内閣府が昨年11月に実施した「国民生活に関する世論(よろん)調査」では、回答者の半数以上が収入や資産面に不満を抱いていることが明らかになりました。具体的には、所得・収入面で68%、資産・貯蓄面で71.9%の人が不満を感じています。また、日頃の生活の中で悩みや不安を感じている人のうち、今後の収入や資産の見通しに不安を感じている人は59.8%にのぼり、この不安は前年の調査より増加しています。

お金に対する不安の根底にあるのは、「必要なお金が足りない・工面できないかもしれない」ことではないでしょうか。つまり、将来的に必要な資金とその対処方法がわかれば、漠然としたお金の不安はある程度解消するとも考えられます。

しかし、日本では多くの社会人が、お金について学んだ経験がないといわれています。

金融広報中央委員会の2022年の調査によると、学校で家計の管理や生活設計等に関する金融教育を受けなかった人は75.7%、家庭で教わらなかった割合は64.7%であり、金融に関する知識に自信がある人は、わずか12.4%です。

子どもには学校での金融教育が始まっている、一方、大人に対する教育の遅れが現状の課題と指摘されています。

お金に対する不安を解消するには、お金について正しい知識を学ぶことが有効です。お金の知識があれば、お金に関するさまざまなリスクを回避するにも役立ちます。

そこで知事にお聞きします。県民に対してや学校で金融リテラシーを高める取り組みの重要性について、どのように考えていらっしゃいますか。(1)

(2) セミナー[ 県民生活部長]

投資や金融系のセミナーに参加したいと関心があっても、詐欺等が横行しているといった報道もあり、だまされるんじゃないかと思うと、なかなか足を伸ばしにくい。どのセミナーが金融リテラシー向上に良いのか判断が難しいことからも、県が開催するセミナーは安心して受講できると考えられます。

昨年の一般質問で、岡山県金融広報委員会と連携して広報をしていくといった回答がありました。
岡山県金融広報委員会にお聞きしたところ、昨年度はセミナーを県内の各地で、年約60回開催し、参加者は、のべ約3,000名だそうです。

これらのセミナーは投資に限らず、金融全般に関する内容を取り扱っているようです。

セミナー自体の開催が公的な機関のため安心して受講ができ、セミナーで詐欺に遭わないように、また、正しい知識を学習して、最近話題のSNS投資詐欺の様な被害に遭わないように、私はこういったセミナーは県民の金融リテラシーの向上の為、もっと頻度や回数を増やしても良いように思いますが、いかがでしょうか。県民生活部長にお伺いします。(2)

(3) 義務教育段階での教育[ 教育長]

ア投資

2022年から高校家庭科で金融リテラシーの授業が始まったとお聞きしています。

学生に資産形成や投資についての教育をすることは、将来の失敗を防ぎ、可能性を広げる重要な試みで、自分の未来について考えるきっかけにもなる、素晴らしい取り組みだと思います。

先日の一般質問で、教育長は、投資に関する教育について、主に高校の家庭科での取り組みを述べておられましたが、義務教育段階においては、どういう教育をされているのでしょうか。教育長にお伺いします。(3)ア

イさらなる充実等

また、金銭に関する教育について、小中学校での取り組みをご答弁されていましたが、人生の各段階において必要となる資金と、それをどう確保していくかを考えるに当たっては、まずは正しい金銭感覚やお金の管理の大切さを、できるだけ早い段階から身につけ、理解することが何より重要ですし、税金や年金の仕組みを学ぶことも大切です。

義務教育段階における、お金に関する教育のさらなる充実、また、投資など、将来の自身の資産形成に関する教育についても、義務教育段階からしっかり取り入れることで、資産形成の必要性や金融商品等のメリットデメリット等を、より深く理解できるようになり、将来の適切な判断につながるものと考えますが、併せて教育長にお伺いします。(3)イ

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